人類が類人猿から分かれ、完全直立二足歩行をという唯一無二の歩みを続けた600万年の間、私たちの足はこの特殊な歩行を可能にするため多くの進化を遂げました。足は骨と靭帯により立体的に形作られ、母指球(第一中足骨骨頭部)、小趾球(第五中足骨骨頭部)、踵の3点を支点として接地しています。接地点を結ぶ骨はアーチ状に並んでおり、それぞれ横アーチ・縦アーチ(内側・外側)と呼ばれます。
三点の中心には舟状骨と呼ばれる骨があり、下腿の筋肉(後脛骨筋靭帯)により引っ張り上げられることで立体的なアーチを形造ります。アーチを結ぶ足底腱膜や筋肉を緊張させたり弛緩させることで、バネのように推進力を生み出したり衝撃を吸収することが可能になります。
足の優れた機能を発揮するためには、立体的な構造が極めて重要なのです。
靴の功罪
人間が靴を履く様になったのは約8000年前と言われています。
600万年に及ぶ足の進化の歴史に比べれば靴の歴史はあまりにも短く、残念ながら足は靴を履くことに適応してはいません。様々な靴を履いて撮影したX線写真を見比べれば、靴の足への影響は一目瞭然です。履く靴の形に応じて足は大きく変形し、見るからに窮屈な印象を受けます。足が変形した状態で歩行という足に最も衝撃のかかる動作を行うため、靴を履く現代人の足は外反母趾や扁平足・開帳足、重心のずれによる浮指や巻き爪など多くの問題を抱える様になりました。
靴を脱げば、足はすぐに本来の形に戻りがますが、靴を履いている時間が長くなれば、やがて足は変形し元に戻らなくなってしまいます。
足の形は、靴によって大きく影響を受ける。
幅の狭い靴を履くと、親指が曲がり外反母趾のような形になる。
辿り着いたのは日本古来の知恵・足袋
歩くための理想的な靴を思い描いたときに浮かんだのは足袋でした。足袋は足の自然な形に合わせて作られており、X線写真を見比べても靴による足への影響はほとんどありません。足の立体的な形が崩れることがないため、その機能を十分発揮することができます。
親指だけが分かれているため前足部への意識も向きやすくなります。これは、女性に多い外反母趾の予防にも良い形です。薄いソールは、地面からの多くの情報を足に伝え、歩けば歩くほど足裏の感覚が研ぎ澄まされるの感じる事ができます。
足袋シューズを履いた足は、裸足の時とほぼ同じ形をしている。